「わたしの名前、知ってるの? 人の名前覚えるの苦手だって言ってたのに」

 それに、わたしと由利くんはクラスも違うし、これまで一度も話したことがない。

 隣に寝転ぶ由利くんの横顔を見ながらまばたきしていると、彼が横目にわたしを見てきた。


「あー、うん。青葉って、マネージャーと仲良いんでしょ」

「マネージャー?」

「バスケ部の」

「璃美?」

「そう。晴太とマネージャー付き合ってるから」

「うん、そうだね」

「たまに、青葉の話聞く」

 ゆったりとした口調で受け答えする由利くんは、ものすごく眠そうだ。

 わたしを見つめる大きな目がとろんとし始めて、今にも閉じそうになっている。

 そのまま寝かせてあげたほうがいいんだろうけど、それよりも由利くんが璃美や眞部くんからわたしのことを聞いて認識してくれていたという事実が意外過ぎて。会話を途中でやめられない。