人当たりのいい眞部くんは、廊下ですれ違うとき、わたしにも気さくに挨拶してくれる。

 女の子に付き纏われている印象が強い由利くんだけど、よくよく思い出すと、由利くんが眞部くんと一緒にいるところもよく見かける。


「眞部くんと仲良いの?」

「仲良いって言うか……、晴太はおれの保護者?」

 由利くんが、ちょっと語尾上がりにそう言って首を傾げる。

 そのとき、彼の左頬の切り傷が目に付いた。

 綺麗な顔だし、肌も白いから、小さな傷でも気になってしまう。


「由利くん。それ、手当する?」

 自分の左頬を指先でちょんとつつきながら訊ねると、由利くんが枕の上でゆるりと首を横に振る。


「いい、布団から出るの寒い。そっちも具合悪いんでしょ? 気にしなくていいよ」

 由利くんがそう言って、ふわっとひとつ欠伸した。

 わたしが具合が悪くて寝てるんだってわかってるなら。そういう気遣いができるなら、すぐにでも空いているベッドに移動してほしいんだけど……。

 マイペースな由利くんのことを見ていたら、またお腹が痛くなってきた。