「莉子」

海斗くんだった。

予想通りではあった。

自分の部屋の窓ガラスが何者かによって破壊された。

そうなったら普通は警察を呼ぶだろうけど、海斗くんはわたしの仕業だと気づくから、きっと追いかけてくるだろうと思っていた。

「おまえ、なのか。おれの部屋の窓を石で割ったのは」

「そうだけど」

わたしは立ち上がって言った。

ごまかす気なんて最初からなかった。

残った石はまだバッグに残っているし、放り投げた石にもべったりと指紋がついている。

「なんのためにあんなことをしたのか、教えてくれないか」

その声音には怒りというよりも、戸惑いのほうが多く滲んでいるようだった。

両親にはどう説明したのだろう。

そんなことをぼんやりと考える。

わたしのせいだとは言えなかったはず。