距離があるから、その細かい表情を確認することはできない。

ついこの間まで彼女だった人が、今日は別の男性と帰宅しようとしている。

気分のいいものではないはず。

わたしとしても辛い。

わざわざこんなところを見せつけないといけないなんて。

来栖先輩に対しても申し訳ない気持ちがある。わたしの計画に利用されているだけなんて知らない。

もしわたしの本音を知ったらきっと軽蔑されてしまう。

わたしはそこにいったいどのくらい立っていたのか。

気づけばサッカー部のみんなは普通に練習を続け、こちらに向けられる目はなくなった。
「そろそろ、行きましょうか」

「うん」

わたしは来栖先輩とともにその場を立ち去った。

誰かの視線を背中に感じ続けたのは、わたしの思い込みにすぎないはず。