「それなら最初に言ってくれれば良かったのに。変に疑って損したじゃない」

「海斗くん自体、あの事故のことに触れたがらないから」

それは実際、わたしのほうではある。

海斗くんのせいにするような言い方は胸が痛んだけれど、会話を成立させるためには仕方がなかった。

「橘くんのほうも誤解かもしれないよね。莉子に対する感謝の気持ちを、恋愛と受け止めてしまったのかもしれない。二人ともまだ若いから、自分の心もまだ完全には把握できてないんだよね」

なんだか、おばさんみたいな言い方だけど、それは指摘しないでおいた。

「じゃあ、一応彼のことを教えておくね。名前は来栖蓮。生徒会では書記をやっている三年生」

そんな情報、本当のところはどうでもいい。

でも、興味を持っているふりをしないといけない。

「どうして、わたしのことを好きになったのかな?」