「ごめん、聞いたことはあるんだけど、誰が歌ってるのかまでは知らなくて」

麗は歌手と曲名を口にした。それを聞いてもピンとはこなかった。

「莉子先輩、それで友達と話、合います?」

「わたし、最近の歌というか、流行してるもの自体知らないんだ。年々そういうものに興味がなくなってるの」

「いったい、いくつですか?わたしとひとつしか違いませんよね。いくらなんでも、おばさん化が早すぎますよ。二十歳になる頃にはもう、死んでるんじゃないですか」

その言葉はわたしに、ずしりと重くのしかかった。

麗はもちろん冗談のつもりで言ったのだけれど、いまのわたしにはシャレにはならない。

「流行を追うのが正しいとは言いませんけど、最低限のことは知っておいたほうがいいですよ。でないと社会人になったときに苦労しますよ」

それはないんだよ、麗。

わたしが社会人にならないことは決まっているから。