「わたしもとくにないかな。昔は歌が好きで、アイドルとかになりたかった気もするけど、いまはカラオケに行くこともなくなったし」

「どうしてですか?」

「なんか、恥ずかしいなって感じるようになったの。わたしの歌なんか聞いても、誰も喜ばないだろうしって」

「ちょっと神経質すぎるんじゃないですか?カラオケって人の歌を聴く前提なんですから、軽い気持ちで行ったほうがいいですよ。なんなら今度、一緒に行きません?わたしも結構、歌が上手いんですよ」

麗は口ずさむようにして何かの曲を歌った。

わたしにはそれがなんなのか、よくわからなかった。

最近ヒットしているものだ、というのは理解したけれど、具体的な歌手と曲名はさっぱりだった。

それが顔に出てしまったのか、

「もしかしてこれ、聞いたことないですか?」

と麗から聞かれた。