「まあ、でも、気持ちはわかりますよ。なんかこの国の政治家って、権力の使い方とかわかってない感じですよね」

社長の娘だからなのか、麗は結構政治的なことを口にする。

経済や日本の将来など、あまり同年代の女子が興味のなさそうな話題を突然振ってくることがある。

「麗ってもしかして将来、政治家とか目指してたりする?」

「実は、そうなんですよね。わたしが議員になってこの国を直接変えなきゃいけないって、ずっと前から思っていたんです」

「そうなの?」

「ヤダ、冗談ですよ」

麗はそう言って、わたしの肩を軽くたたいた。

「いまのところ、わたしには夢らしい夢なんてないんですね。これから探すつもりではありますけど、普通の奥さんも悪くはないかなと思ってます」

麗の視線は、ボール回しをしている部員たちに向けられたまま。

それが特に海斗くんに集中しているような気がするのは、たぶん誤解じゃない。