「……教師とかいいかなと思ってるんだよ」

「学校の先生?どうして?」

「中学のときの事故で、一時期は自暴自棄になっていて、そんなおれを支えてくれたのはもちろん莉子なんだけど、担任の先生にも救われたんだよな」

まだ若い女性の先生だったけど、生徒に対する情熱は本物だった。

わたしも一年同じだったからわかる。

なにかのドラマに影響されて教師を目指したらしく、言葉のチョイスなんかもどこか台詞みたいに聞こえることがあった。

ドラマには生徒の葛藤や絶望は付き物。

だからこそ、その先生は海斗くんにも必死に向き合った。

自分の立場に酔っていたのかもしれないけど、それもまたあの先生の本質だった。