海斗くんにこんな顔を見せるわけにはいかない。

わたしはハンカチで涙を拭き、自分の頬を手で何度も打って気持ちを入れ直した。

山に行くと行っても、頂上を目指すつもりはなかった。

この街の郊外には誰でも気軽に登れるような山があって、その中腹まではロープウェイが伸びている。

わたしたちはそこまで行くつもりだったので、二人とも軽装だった。

ロープウェイを降りると、右手側には飲食店などを併設した商業施設、正面には頂上まで続く道が延びていて、ゴンドラを降りた多くの人たちがそちらに向かった。

左手側には展望広場がある。

わたしと海斗くんはそちらに向かった。

昨日、観覧車に乗ったあと、わたしはなぜ山に登りたいと思ったのかを知った。