「人が集まるところなら、他にもあるでしょ。通勤通学に買い物。そういったものを規制しなかったら意味ないと思う」

「うーん、政府ってそういうものじゃないですか。わかりやすいところでアピールするんですよ、ちゃんと仕事をやってますって」

「ということは、本当の危機感もないってことだよね、ウイルスに関しては」

「どうなんですかね。わたしは経済を優先しただけだとおもいますけど。それとも莉子先輩、なにか知ってるんですか?」

今度はわたしが沈黙する番だった。

つい、口走りそうになるのをなんとか止めた。

「わたしはただ、プロスポーツも中止になるくらいだから、政府はもっと大事なことを隠してるのかもしれないかなって」

「例えばどんなことですか?」

「それは、まあ、スキャンダルとか?」

麗はプッと吹き出した。

「政治家の不倫でも隠すために、こんな大がかりなことを?そんなのあり得ないですよ。しっかりしてくださいよ、莉子先輩」

「そ、そうだよね」