「ああ。単なる子供のときの思い出だったら、こうも執着するとは思えないんだ。そこに何か特別なものがあったはずなんだ」

観覧車の思い出と言ったら、普通はキスを思い浮かべるかな。映画や漫画では定番だし。

でも、当時は小学生だったわけだから、そんなことはありえないよね。

「いいよ、もう一度乗ろう」

「悪いな。デートなのになんか、自分の過去を押し付けるようで」

「構わないよ。もしかしたらわたしにも関係しているかも、だし」

「たぶん、そうだと思う。莉子との思い出が隠れているはずなんだ」

どうせ小学生の頃のことなら、そこまでこだわるようなものでもないとは思うけど、海斗くんがそれで納得できるのなら、何回でもわたしは観覧車に乗るつもりだった。

二人でゴンドラの中に入る。