「そうか、受験か。莉子は行きたい大学とかあるのか?」

「わたしはとくにはないかな。海斗くんは?」

「いろいろ考えることはあるよ。いまはまだ秘密だけどな」

わたしは海斗くんの夢を知らない。

わたしのせいでサッカー選手の夢を諦めたから、どうしても聞くことはできなかった。

「えー、教えてくれたっていいじゃない。わたしたち恋人でしょ」

軽い口調で聞いたのは、わたしの緊張を悟らせないため。

海斗くんのいまの夢がなんなのか、本当に知りたかった。

「いつか教えるよ。そんな慌てなくてもいいだろう。まだ高二なんだから、具体的なことを言うのもちょっと恥ずかしいんだよな」

「言いにくいもの?」

「さあ、どうだろうな」

なら、わたしは最後まで海斗くんの夢を知ることはできないのかもしれない。

それも仕方のないこと。

わたしに望んでいるのはひとつだけ。

新しい世界で、海斗くんが決して心折れることなく生きていけること。それだけ。