「あの頃のことが、最近、やけに懐かしく感じるんだ。幼い頃の記憶がふいに、そして何度もよみがえってくる」

「なんか、おじいちゃんみたいな言い方だけれど」

「自分でもよくわからないんだ。答えを知るには、実際にそこへ行ってみるしかないように思う。ただ」

「ただ?」

「妙に怖い気もするんだよ。行かないほうがいいと、別の自分が止めているような感じでさ」

「ジェットコースターに乗ったからとかじゃない?」

「そういう恐怖とは、違う気がする。当時の記憶とかじゃないんだ。具体的にどうとはいえないけど、嫌な予感がするというか」

もしかしたら海斗くんは、わたしの寿命を察しているのかもしれない。

これが最後のデートであることを本能的に理解し、それで怖がっているのかもしれない。