「莉子はどこか行きたいところあるのか?」

「わたしは山かな」

「山? 莉子ってそんなにタイプだったか?運動はどちらかといったら苦手だったよな」

「なんとなく、そう思ったの」

自分でも不思議だった。

海斗くんから行き先を尋ねられたとき、真っ先に浮かんだのが山で、気づけば口からその単語が出ていた。

「別に本格的な登山じゃなくていいかも。ちょっと高いところの空気を吸ってみたいかなって」

「今年は暑いっていうからな。悪くないかもしれない」

「海斗くんはどこか希望ある?」

「おれはまあ、その」

海斗くんはなんだか言いにくそうにしたあと、

「遊園地かな」

と続けた。