わたしはあまり電話は好きではなかったけど、夜、眠るときは海斗くんと話をしてからにすることにした。

そうすると普通の睡眠が訪れる確信があったから。

わたしが海斗くんを頼ろうとしてから、どこかこれまでとは違うような関係が生まれた気がした。

いつもと違う距離で話し、いつもと違う感覚で答えを探る。

このときにはじめてわたしは海斗くんに気づかないうちに遠慮していたのだと実感した。

いつもの通学路がそれまでとはまったく違う景色に見えた。

普通に歩いているだけでも、海外に来たかのような新鮮な感覚を味わった。

皮肉な運命だな、とわたしは思った。

死を間近に感じたとき、わたしはあの事故以来はじめて人としての生きがいみたいなものを感じている。

もっと早くに気づくべきだった。

そうすれば、海斗くんとの関係ももっと変わったものになったと思う。