「顔色とかじゃないんだよね。もっとなんていうの、存在感？ほら、人ってそこにいるだけで気配が感じ取れるでしょ。声を聞かなくても、背後に誰かがいるのがわかる」

マコは静かに目を閉じた。

「こうしているとね、ほんと一人だって感じがする。近くに空気の流れを遮るものがなくて、誰の体温も伝わっては来ない。このまま目を閉じ続ければ、わたしは莉子と出会ったことも忘れてしまうのかもしれない」

マコは目を開け、こちらを見た。

「これがあなたの最後の時間なら、わたしはそれを邪魔したくはない。わたしなんて結局サブキャラだからね。きっと、これは莉子の物語なんだよ」

「マコ」

「そういう運命、だったのかもね。前回のわたしが存在したのは、あなたに最後の希望を授けるためだったのかもしれない。あなたの願いが世界を変質させ、わたしの運命すら書き換えた。そう考えると、すべてが府に落ちるような気がするの」