「無理ですよ。ほとんど残しちゃいますから」

「あまったら、部員みんなにおごればいいんじゃない?ファミレスとか貸しきって配信するとか、面白そうじゃない?」

「……」

愛想の良い麗が完全にわたしを無視している。

グラウンドを走ってウォームアップしている部員の姿をただ眺めている。

何か怒らせるようなこと言ったかな?

軽い冗談のつもりだったし、不愉快になるようなことを言ったつもりもないんだけど。

そう言えば、前回もこんな話をしたかな。

死んだ衝撃で記憶が飛び飛びになっているので、細かい会話なんかだと正確なところは思い出せないんだけれど。

「そういえば、ねぇ、麗、気にならない?ウイルスが流出したとかってニュースになってたよね」

わたしが話題を変えると、今度は麗から反応があった。

「そのニュースなら知ってますよ。でも、気にならないですね。爆弾テロのほうがよっぽど怖いですから」

「そう?」