親がいないとわかれば、仮に失踪したとしてもわたしのことを積極的に探す人もいなくなる。

これで理性を抑える壁がひとつ崩れて、加々美さんの中にある狂暴な部分が刺激されるはず。

まあ、いろいろ無理があるけれど、なんとか押し通すつもり。

「いくら、必要なの」

「1000万です」

「イ、1000万?」

「はい。それだけ難しい手術なんてす。入院費用も含めれば、もっと高額になります。」

「ぼぼぼ、ぼくにそんな額払えるわけないじゃないか。というか、きみ、本当に病気なの?もしそうなら病院にいないとおかしいじゃないか」

「病院は貧乏人には厳しいんですよ。入院費を払えなければ、すぐに追い出されてしまう。医者の先生はわたしが路頭での垂れ死んでも全然構わないんですよ」