「認める気はないということですか?本当にその結論でいいのか、もっとじっくり考えた方がいいと思いますよ。そうじゃないと、交渉もできませんから」

「交渉?」

「それ以外にありますか? わたしがここに来たのは、加々美さん、あなたと取り引きをするためですよ」

こう聞けば、さすがに動揺している加々美さんも理解するはず。

わたしの目的がなんなのか、を。

「ぼくを、脅すっていうのか」

「はい、その通りです」

そう言った直後、わたしはわざとらしくゴホゴホと咳き込んで見せた。

「実はわたし、病気なんです。医者の先生からは、手術を受けないと、いずれ死んでしまうと言われています。でも、それはかなりの高額で、頼れる親もいない」

「親がいないって」

「あ、わたしは孤児なんです。親に捨てられ、施設で育ちました。だから頼れる人がいないので、どうしようかと考えていたときに、あなたの反抗を目撃したんです」

これは加々美さんのハードルを下げるための嘘。