プロスポーツとは違って政府からの規制はなにもないので、やっぱり部活は行われることになった。

学校ではウイルス流出事件のことはあまり話題にはなってはいなかった。

みんなそんなことよりも、他に気になることはいくらでもあった。

この反応も前回とは変わらない。

ちょっとの違いはあるけれど、誰も深刻には受け止めていなかった。

みんな好きな動画やゲーム、夏休みのことなんかで盛り上がっていた。

わたしもそうだったような気がする。

ウイルスが持ち去られたという報道を聞いたからといって、なんの脅威にも感じてはいなかった。

わたしの後輩、楠本麗もそんな一人。

彼女も同じサッカー部のマネージャーで、今日もわたしの隣に立って部員の練習を見守っている。

「莉子先輩、この前オススメした動画は見ました?」

「見たよ。すごかったけど、ちょっと吐き気がしたかな」

麗は大食いの動画が大好きで、お気に入りのものはわたしにオススメしてくる。