その過去を、わたしは海斗くんには伝えていない。

だから海斗くんはいまも、わたしのせいで事故に遭ったなんてことは知らない。

わたしの謝罪の言葉も、届くわけがなかった。

「まだあのときのことなんか気にしてるのか。お前が悪い要素なんてひとつもないだろ。交通事故なんてものは偶然に過ぎないんだから」

いつか説明したいとは思っていた。

わたしの能力も含めて、海斗くんに理解してもらいたいと。

でも、その可能性はもうない。

少なくとも、いまは。

「むしろ、感謝してるんだ。莉子、お前が熱心に看病してくれたから、いまのおれがあると思っている。あのままだったらおれ、すべてのことに絶望して生きるのをやめたかもしれない。あのときの絶望感を晴らしてくれたのは莉子、お前なんだよ」

「……」

「今度はさ、おれが莉子のことを守るよ。お前がちゃんと前みたいな生活を送れるよう、リハビリにも付き合う。部活だってもうやめるつもりなんだ。だから、生きるのを諦めるな。」