「わかった、から、泣かないで」

「おまえが生きてくれるなら、もう泣かないよ。約束する」

どうにか声は出せるようになっていた。

ほとんど唇も動かせないくらいたから、きっと海斗くんは聞き取りづらいだろうけど、わたしの意思は伝えることができる。

「ねぇ、海斗くん、いま、ひとり?」

視界は完全には戻っていなかったので、病室の様子を観察することもできなかった。

近くにいる海斗くんだけをぼんやりと認識できるような状態だった。

「ああ。莉子の両親と入れ替りで見舞いに来てるんだ」

「いま、何日?」

「いまはただ寝てれば」

「いいから、教えて、お願い」

「……7月の24日だよ」

7月の24日。あの日だ。

「何時、なの」

「いまは昼だよ。莉子の両親はお昼ご飯を食べに行ってるんだ。ちなみにおれはもう済ませたから、気にしなくてもいい」

「じゃあ、もうすぐだね」