「莉子、莉子!」

海斗くんが泣いている。

わたしはその水滴を顔面で受け止めている。

「珍しいね、海斗くんが泣くなんて。あのときだって、涙は見せなかったのに」

「しゃべらなくていいんだ。いまは無理をせずに休まないと。おれはいますぐ先生を呼んでくるから」

先生、というのは学校の教師でないことはすぐにわかった。

医者の先生のことだ。

わたしはすでに状況を理解していた。

ここは病院で、わたしはベッドに寝ている。

電車に跳ねられ、でも、死ぬことはなかった。

きっと動けないほど全身を骨折して、でも、生きている。

また、自殺に失敗したんだ。

わかってはいた。

電車への飛び込み自殺が決して確実な方法ではないことくらい。

わかってはいたのに。