するとその声は、とたんに大きくなり、暗闇の部屋をかすかに照らし始めた。

声が光をつれて、わたしのもとまで届いてくる。

「ーー莉子、聞こえるか、おれの声が聞こえるか!」

「……」

「そうだよ、おまえは芹沢莉子だ。わかるよな!」

海斗くん、わたしは反射的にそう言った。

実際に言葉が出たのかはわからないけど、そういう意識は確かにあった。

「いいんだ、なにも答えなくていい。目を開けてくれれば、それでいいんだ。おれの声が聞こえるなら、莉子、なにか反応してくれ」

暗闇の部屋が光で満たされ、そのまぶしさがわたしのまぶたを揺るがした。

光を追い出すように目を開くと、間近なところに誰かの顔があった。

「……海斗、くん」

絞り出したようなかすかな声でも、聞こえるくらいの近さだった。