頭でいくら動けと思っても、その指令は爪先まで届かない。

怖かった。

わたしはその時初めて、この空間に恐怖というものを感じた。

ここは、異常な空間。

人がいるべきではない場所。

どうしてこんな単純なことに気づかなかったんだろ。

暗闇のなかにいるのが当然だと、頭のなかで思い込んでしまっていた。

ここにいるのがとても楽で、どこかへ行こうという気力が一切生まれてこなかった。

唯一、この暗闇に入り込んでくるのが、誰かの声だけ。

その声は、わたしにとっての希望の光だった。

この声がなくなれば、きっとわたしは死んでしまう。

わたしはその声に、心の中で応答した。

なんと言ったのか、自分でもよくわからなかったけど、喉の閉塞感を壊すくらいの気持ちで叫んだ。

「ーーっ」