「あなたに危害を加えるつもりはありません。繰り返しますが、わたしたちが欲しているのはあなたの爆弾のみ。起動スイッチなどがあればそれを置いていってください」

「ぼくは、だから、その、爆弾って、いったいなんのことだか、さっぱりで」

なかなか認めない。

さすがにわたしのなかにも焦りが生まれてくる。

このやりとりを耳にして誰かが近づいてくるかもしれない。

「隠す必要はありません。逃げることも諦めてください。すでに周囲にはわたしの仲間が待機しています。あなたに残された道はひとつ、わたしたちに協力をすることです」

「ほ、本当だって。名前だって違う。ぼくは佐伯亮っていうんだ」

そう言って彼はポケットに手をいれ、こちらに向かってカードらしきものを投げてよこした。

拾ってみると、それは免許証だった。

名前は確かに佐伯亮と記されている。

加々美春樹じゃない。

顔も免許証と一致している。