相手に言うことを聞かせられるような設定が必要。

わたしは必死に頭を働かせる。

大きく息を吸った。

そして。

「え?」

わたしがロッカーから出ると、犯人は凍りついたように固まった。

そこにいたのは小太りな男性。

野球の帽子を被り、チェック柄の半袖のシャツにリュックを背負っている。

その中におそらく爆弾が隠されているのだと思う。

わたしは相手を刺激しないようにニッコリと笑った。

「はじめまして。わたしは芹沢莉子。ここであなたを待っていました」

暗闇にすっかり慣れたわたしとは違い、彼はまだ状況を把握できていないのかもしれない。

わたしは窓際に立ってはいるけど、外からの明かりは少ない。

突然誰かがロッカーから現れ、しかも女性の声が聞こえたとなると、冷静な判断も難しいかもしれない。