「すごい怒られたよな。でも、あれって姉さんの仕業じゃなかったか?」

「え?」

「確かさ、おれが何かイタズラしたら、姉さんが激怒して手元にあったコップとか投げた気がするんだよな」

そうだったのかな。

小さい頃のことだから、わたしもはっきりとした記憶が残っているわけではない。

記憶はそもそも曖昧なもの。

わたしと海斗くん、どちらが本当のことを覚えているのかなんて、たいした問題ではないのかもしれない。

大事なのはそういう過去を経て、いまのわたしたちがあるということだから。