轟音が辺りに響き渡った。

「え?」

音のするほうを見た。

少し先にあるビルから響いてきた。

雑居ビルの三階、その窓からモクモクと煙が吹き出している。

「あ、そうか。今日なんだ、爆弾が爆発するのって」

この近くで起きることを、すっかり忘れていた。

解体を待つような古いビルで、内部には誰もいないことをわたしは知っている。

爆風で飛び散ったガラスで怪我をする人摺すらいない。

だから特別な危機感も生まれなかったのかもしれない。

「な、なにが起こったんですか」

狼狽える麗。

わたしはその隣に立った。

「あれはこの一年くらい起きてる爆弾魔の事件。でも安心して、あのなかには誰もいないから、今回も死人は出てないよ」

落ち着いた説明に、麗はまばたきを繰り返す。

「なんでわかるんですか?」

「まあ、さっき通りかかったから?」

「疑問系なのが気になるんですけど」

わたしにとってはこんなイベント、どうでもいいこと。

仮に人が死んだってなにも思わないはず。

とりあえず試してみるしかない。

いまはもう、時間が過ぎるのを待とう。

いまからできることなんて、もう何もないんだから。