「父親の浮気ですよ。いまはもう、新しい奥さんと一緒に暮らしています。これでいいですか?」

「じゃあ、家を追い出されたってこと?」

「そうですよ。でも別に不満はありませんよ。お金の面では苦労してないですから。ただ、周りから視線が気になるから何も言わなかっただけです。そういう役割りみたいなのを求められるので。莉子先輩には言うつもりだったんですけど、タイミングが合わなかったですね」

目の前が真っ暗になった気がした。

まだ可能性は残されているとはいえ、はっきりと大丈夫とは言えなくなる。

これでは自殺だって、できない。そんなことしたら、すべてが終わってしまう。

もう一度繰り返す?

でも、麗の両親はとっくに離婚してしまっている。一週間よりもずっと前に。

きっと結果は同じになる。麗は大丈夫かもしれないけど、海斗くんは……。

「あの、莉子先輩?」

空中をぼうっと見ているわたしに、麗が声をかけてくる。