「名前は聞いたことあるけど」

怪訝そうな顔をしながらも、麗のお母さんは比較的冷静な対応だった。

それでわたしも少し落ち着くことができた。

そうだ、ここは公の歩道。

土曜日の今日は往来も多い。

大騒ぎをすれば警察が駆けつけてくるかもしれない。

変な人だと思われちゃだめ。

ちゃんと確認すべきことを確認しないと。

「いえ、麗さんの様子が最近おかしくて、その原因が両親の離婚によるものではないかと、知り合いから聞いたもので」

「あら、そうなの。離婚してもう三ヶ月も経つけど、まだ引きずっているの?」

お母さんからそう確認をされても、麗はまだ戸惑いを浮かべている。

きっと麗は必死に隠してきたんだと思う。それが知られてしまっていたことで動揺してまっている。

「お母さん、わたし先輩とちょっと話していくから」

絞り出すようにして言ってお母さんを先に行かせると、麗はわたしに向き直った。