「いや、おれがトイレに助けに行ったとき、こいつはいなかったはずなんだが」
大滝はさらっと「助けに行った側」であることを強調した。
「そら大滝さん、見つかったら恥ずいからって隣の個室に隠れてたんでしょうよ」
「なんでそんなことがわかるの?」
「職業柄っすね」
特殊電機屋、恐ろしい職業だ。と大滝は思った。そこまで状況をくみ取れるところと電機と何が関係あるのか不明だが、どうやら『特殊』の方と大いに関係があるらしい。
「安見さんひどいなー、オレちゃんと手洗いましたけど」
気絶している安見の頬を、岩野がつんつんつついた。
すっきりしたのでお代は要らないっす、またなんかあったらお気軽に!
明るく言い残して、特殊電機屋は帰って行った。
大滝は白眼を剥いている安見を見て、特殊電機屋は本当に困ったときしか使わないようにしよう、と思った。