特殊電機はフレンドリーに握手をした。大滝、岩野と握手をし、最後に安見とも握手をしようとした。しかし安見は躊躇った。きちんと尻を拭けたかわからない岩野の手が、きちんと洗われているかわからなかったから、間接的に触ったことになるのが嫌だったのだ。


「どうかされました?」

「こういうノリ苦手なんで」


 結果、安見の性格が悪いみたいになってしまう。実際悪いので間違っていないが。一方特殊電機はすんなりとその主張を受け入れ、手を引っ込めた。やっぱりいい子だな、と大滝は思った。


「で、今日は……急な停電、それもこの辺一帯ではこことあっちの倉庫だけってことっすね」

「もう大変だったんですよ。オレ、トイレに入ってたのに急に真っ暗になるから」

「マジすか」特殊電機は岩野の余計な話にけらけらと笑った。「災難っしたね」


 特殊電機はぐるりと辺りを見回すと、「ちょっと失礼します」と言って、ぱむ、と両手を合わせた。手袋越しのため、くぐもった音がする。
 
 すると。

 ほとんど同時に、すべての電気が復旧した。