「これだけ綺麗に晴れたらきっと綺麗に見えるよね?」

「そりゃそうだよ~! というか、むしろ綺麗に見えてくれないと困る。このご褒美を楽しみに頑張ったんだもん」

今日は年に1度しかない、地元の花火大会の日。

全国でも屈指の打ち上げ数を誇るこの花火大会を見ることをご褒美に、私たちは夏期講習を頑張ったのだった。

しかも、私たちの場合―私たちの学校の生徒の場合―、花火大会に行って見るのではない。

「それにしてもさあ、屋上から花火が見えるなんて、本当にラッキーだよねえ」

私の言葉に、美羽が共感するように頷く。

「本当だよー、人でごった返している花火大会に行かなくても花火が見られるだけで嬉しいのに、花火大会に行くより綺麗に見えるなんてさあ。ラッキー以外の何物でもないよ」

そうなのだ。
周りに高い建物が無いおかげで、私たちの学校からはー特に屋上からはー、何にも視界が遮られることなく、綺麗に花火が見えるのだ。

「この日だけは、『この学校の生徒で良かった』って思うよね」

「そうそう。校則が厳しくても、課題がいっぱいだされても、この日があるから頑張れるんだよねえ」

これからの花火が楽しみで、頬を緩めながら食堂へ入る。

「なんか……今日、人多いね?」

いつもならほとんど生徒がいない時間帯であるにも関わらず、今日はパッと見る限り座る場所が見つからないぐらい、食堂には多くの生徒たちがいた。

「みんな、花火見るために残っているのかなあ」

「きっとそうだよね……ほら見て、あれ、高校1年生だよ」

私は、制服のリボンに黄色のラインが入っている生徒たちを指差す。

私たちの学校の制服は、学年によって、リボンやネクタイに入っているラインの色が違う。

1年生は黄色、ちなみに私たち高校3年生は赤色だ。