ーバシッッ
頬を叩く痛々しい音が、リビングに鳴り響いた。
「痛っ」
ああ、また始まった。
口答えなんてするんじゃなかった。
「あんたねぇ!
誰のためにやってると思ってるの?
誘拐されたら困るのも全部自分なんじゃないの?」
「でも、………」
「まだなんかあるの?」
今日はやけに重圧が強い。
こう言う時は素直に従うのが無難だ。
「はい。ごめんなさい。」
「謝ればいいってもんじゃないの。
お母さんが言ってることわかる?
誰のためだと思ってるの?」
「私のため。」
「そう。希愛のためだよね。
だから外す必要ないよね。
言いたいことわかった?」
「わかった。」
これで、いいんだ…