それから数分後、父が診察室から出てきた。

 父は所謂シングルファーザーで、現在、複数の仕事を掛け持ちながら私を育ててくれている。

 「帰ろうか」

 父は隠そうと必死だったのだろうが、顔は強張っていて、現実を突きつけられたのだろう、と察した。

 迷惑をかけてばかりいる分、父に余計な気を遣わせたくなくて、無言で車に揺られて帰宅した。

 自宅に着いてからは、私が自室に引きこもることで父にひとりの時間を確保しやすい環境を作った。

 これくらいしか私にできることはないから。