躊躇いもなく首筋を噛む神崎の手が、俺の着ている服を肩側に軽く引っ張る。まるで舐めやすくするようなその行動に、完全に彼を受け入れ身を預けている俺は、与えられる甘い刺激に期待値を膨らませながら狙われた急所を更に狙いやすくするように顔を横に向けた。そうすることで視界に入った、俺の手を掴んで拘束する神崎の手。緩く絡められた指先。していることは強引なのに、その手だけは俺をとことん甘やかしているかのようで。垣間見えた神崎の優しさに、緩く開かれた口からぽとりと落ちそうになった言葉を慌てて拾い上げて呑み込んだ。気を抜けば言ってしまいそうになる。でも、言ったら、終わりだから。現実世界に強制的に引き戻されるから。まだ、まだ俺は、夢を見ていたい。

「秋月」

 首筋から甘い熱が離れたと思ったら、無警戒だった耳元で濡れたその声に囁かれた。不意打ちに肩を揺らし、ハッと顔を神崎の方へ向ければ、再び貪欲に重ねられる唇。緩んだ口はすぐに神崎を受け入れ、ぬらぬらとした彼の赤い舌が、俺が言ってしまいそうだった言葉すら掻き回して粉々にしていくかのようだった。