大人になったことで、酒が飲めるようになった。どこで覚えたのか、体が自然とその知識を得たのか、挑発もできるようになっていた。大人だから、付き合ってなくてもキスができて。大人だから、付き合ってなくても体を重ねられて。大人だから、言葉ではなく行動でコミュニケーションを取って。俺が煽って、神崎が煽られて。自分たちがしていることは、三大欲求の一つに他ならなかった。

 本能の赴くままに唇を重ね、抉じ開け、我を忘れるように真っ赤な舌で唾液まみれのそれを絡め取られる。目が眩むほど、そのキスは激情的で。快楽に呑み込まれるように、徐々に、徐々に、興奮。高揚。神崎にとって俺は冷たいだとか、俺にとって神崎は熱いだとか、深く重なり合った今となっては、俺と神崎の体質を分ける体温なんて、一切合切、混ざって、混ざって、溶けて、溶け込んで、熱いも冷たいもどうでもよくなるほどだった。ただ、ただ、今は、何もかも忘れて、長年満たされずに溜まった欲求に従順になって、神崎の熱に酔い痴れていたい。溺れていたい。

 淫らな吐息が口から漏れる。一時的に離れた唇が、舌が、俺のものか、神崎のものか、どちらのものか分からない混ざり合った糸を引いた。そうして、立て続けに神崎は、快感に力が入らないまま息を切らす俺の首筋に顔を埋め、他の誰かが触れたその箇所を自分の色に塗り替えるように自らの舌を這わせた。ぶつかる神崎の吐息は、火傷しそうなほどに熱かった。