『付き合って…くれませんか?』
言わない人もいるその言葉と,心のそこのそこから絞り出したような声。
叶う可能性なんかないと信じきっている様子の,それでも芯のある瞳。
そこで,僕は身体中の力が抜けて,ふっと軽くなったような感覚に襲われた。
『うん。いいよ?』
そして,気付けばそんなことを言っている。
僕は,今川さんの用事をなんとなく分かった上で,正直に言うと断るつもりでいた。
ぐいぐいくる人も,泣きながら謝って去っていく人も苦手だったし,そもそも好きとか言うのが分からなかったから。
でも,僕は今確かに,今川さんを可愛いと思った。
『って…い,いいんですか?』
頬を染めて,何故か僕に釘付けになっていた今川さんは驚きに目を丸くする。
『うん。いいよ? 今日から今川さんは僕の彼女ね。敬語もだめだからっ』
『わっ私の名前…!』
『うん。知ってるよ? 同じクラスだもんね』
そこまで言って,僕は気付いた。