番外編
ーあの日の白翔ー



『あのっ春日井くん。ごめんなさい,ちょっとだけ,時間いい?』

『うん。いいよ』



クラスでもよく雑用なんかを進んでやっている今川さん。

それに気付いているのは多分僕だけ。

人がいるなかでわざわざ言いに来たこと,そしてその申し訳なさそうな顔をみて,行かないなんていじわる言う気にはなれなかった。



『あのっ……大したことじゃないので,先に帰る準備して貰っても大丈夫です。その,校舎裏で,待ってます』



その何かに押し潰されそうな表情をみて,今川さんにとっては大したことなんじゃないの? と思う。

そのまま着いていこうとした僕にまで気遣って,疲れないのかなとも思った。

相手を待つ時間は,僕は経験したことないけどすっごくそわそわして,いろんな感情でごっちゃ混ぜになって,あんまりいいものじゃないと思うから。