「何?」

「……思ったより、はっきり喋るんだな」

「へ?」

「いや、森崎と話してる時はもっと女子っぽいっつうかーー」

「今が女子っぽくないって??」

「あ、いや、そうじゃなくて」


緒方君は定期的に失礼なことを言わなきゃいけない病気にでもかかってるんだろうか。

間髪入れずに質問すると、慌てて否定が返ってきた。

思いの外慌てて弁明する様子に、こっちが驚いてしまう。



「もっと大人しい…おしとやか?物静か?そういうイメージだったから、意外とはっきり言う奴で驚いた。森崎には猫でも被ってんの?」

「そりゃ…当然でしょ」

「当然?」

「だって、森崎君は私の好きな人なんだよ?別にキャラ変えてるとかじゃなくて、好きな人には少しでもいい印象持ってほしいなと思ったら勝手にそうなってるって言うか…」


なんで私は仲良くもない、むしろ印象最悪な奴に対して恋バナしてるんだろう。

いや、むしろ最悪だから気兼ねせず話せてるのかな?

…なんだか恥ずかしくなって、慌てて話題を変える。



「大体、森崎君に猫被ってるっていうより、緒方君みたいな女心を弄ぶ最低野郎に対してかぶる猫がないって方が正解だから!あんたの印象がマイナスすぎるの!」


大声で主張すると、緒方君は目を丸くしてこっちを見てきた。

何となく目付きの悪い印象があったから、思いがけず幼い顔をされてこっちまで驚く。


「なるほど、俺がマイナスか。…けど、俺はこっちの方が話しやすいし…うん。俺はそのままのお前の方が好き」


こっちを向いたまま、緒方君はそう言った。

今日の天気について話してるみたいに呆気なく。

思わず足を止める。

立ち止まった私を不審に思ったのか、彼は数歩進んでから足を止めて私の方を見た。


「どうした?」

「え、どうしたって、え、こっちのセリフ……」

「は?」


思いっきり怪訝そうな顔をしてきっかり3秒。




「他意はない!!さっき言ったことは!忘れろ!!!」




急速に首まで真っ赤に染まった緒方君は、大声で叫びながら走り去っていった。


「えぇえ……」









緒方優征。第一印象は最低野郎。

かと思えばわざわざ手伝ってくれたり、帰りを待っててくれたり。

なにがしたいのか全くわからない。

呆然と立ったまま、遠くなっていく背中を眺める。


「…帰ろ」


深く考えるのは止めることにした。

大体、意味わかんないゲームしてる時点で理解不能なのは分かりきってたし。

さーて、今日の夕飯何かなー。