「え、ちょ、ジャージ汚れる汚れる!」

「こっちはモップがけした方だから大丈夫だ」

「大丈夫じゃないよ!!はーなーしーて!!!」


ずるずると、抵抗などまるで無意味かのように運ばれる。

腹が立つのと同時に、肩こりが解消されそうな伸びを感じて余計イライラした。

結局足先までモップの進路を邪魔しない位置まで引っ張られると、今度は繋いだ手を緩く揺らされた。

あ、これ整体でよくされるやつ。

専門家と同じ効果があるかは謎だけど、少し肩から力が抜ける。


「はい、輸送完了」

「荷物みたいに言うのやめて」

「今文字通りお荷物だっただろ」

「緒方くんが勝手にお荷物にしたんでしょ。起こしてくれるだけでよかったのに」

「はいはい俺のせい俺のせい」


腹立つなぁ!!!


ちょっといい人だなと思ったらこれだよ。

不貞腐れるように横向きになると、上からこらえたような笑い声が聞こえて恥ずかしくなった。

流石に子供っぽすぎたかな。

動き出した緒方くんを横向きのまま盗み見ると、またモップをかけだしていた。

そろそろ終わるだろうなぁと眺めながら、起き上がる覚悟を決める。


今から帰るの面倒だなぁ...。