「大丈夫じゃないだろ。このまま続けてたら本番までに体調崩すぞ」

「そんなに弱くないです。終わったらゆっくり休むからいいの!」

「...はぁ。じゃあ、練習する時はこまめに水分とって、休める時は率先して休め。いいな?」

「はいはい」


お母さんみたいなことを言い出したな…と思いながらおざなりに返事をする。


「約束したからな。...よし、帰るぞ。片付けしてやるからそこで座ってろ」

「は?私が使ったんだから私がするーー」

「今、約束したよな?休める時は率先して休むって」

「いや、それは練習中の話であって、」

「いいから座ってろ。ボール片付けてモップかけるだけだ。5分で終わる」


言うだけ言うと、緒方くんは勢いよく立ち上がった。

近くに転がっていたボールを1つ拾うと、空いたもう片方の手で軽く私の頭をぐしゃぐしゃにするように撫でて、用具入れの方へと歩いていく。

......汗かいてるし髪型崩れるから、頭触らないでほしいんだけど。



(もう面倒だし、緒方くんに任せちゃおう)



起き上がっていた上半身をもう1度寝かせて、横向きの世界からモップがけする緒方くんを眺める。


(緒方くんって何考えてんのかな?)


女の子の恋心を弄んでる最低なヤツかと思えば、こうやってモップがけしてくれたり。

クラスでは無口でミステリアスーとか女子に言われてるけど、話してみたらちょっと口の悪いただの男子だし。




......性格は最低だけど。