「だいぶ決められるようになったじゃん!」

あれから宣言通り、森崎くんは毎日練習に付き合ってくれた。

そのおかげであれほど決まらなかったシュートも少しずつ入るようになってきている。

...とはいえ、他の人に比べたらまだまだなんだけど。


「ありがとう!森崎くんのお陰だよ!」

「いやいや、有馬が頑張ったからだって。運動好きって訳でもないのに毎日頑張っててすごいよ。球技大会まで頑張ろうな!」


肩にかけたタオルで汗を拭きながら、森崎がニコニコと笑いかけてくれた。

...森崎くんが教えてくれるから頑張れてるだけなんだけどなぁ。

動機が不純で申し訳ない......。


「やばい。今日これから用事あるの忘れてた!!ごめん有馬今日はもう片付けをーー」


ドリブルの練習をしていたところで、急に森崎くんの顔が引き攣った。

視界に時計が入ったことで思い出したのか、慌てて片付けを始めようとするのを止める。


「え、時間大丈夫?!遅くまでごめんね。もう私も練習終わるから先帰って!」

「でも後片付けがーー」

「そもそも私が勝手にしてる練習にわざわざ付き合ってくれてるんだから。後片付けなんて気にしないで!ほらほら、用事間に合わなくなっちゃうよ」

「......ほんとごめんな!!サンキュ!」


へらっと笑いながら手を振って、森崎くんを見送る。

去っていくのを見届けてから、糸が切れたように座り込んだ。


「あーーー、きっつ...」


森崎くんと話していた時に比べて2段階くらい低い声が出た。

可愛さの欠けらも無いけど、誰も聞いてないから別にいいんだ。