「教えるとか偉そうに言ったけど、俺バスケ部じゃないからめっちゃ詳しく専門的にとかは無理だから!ごめんな」

「いやいや!一人でやっても全然うまくいかないから、シュートしてるとこ見せてもらえるだけでも助かるよ」

「そうか?よかった。まぁ適当に力抜いてぽんっと投げればーー」

ボールは板に軽く当たった音がした後、軽くリングの上を滑ってゴールに入っていった。

「すごい!」

「おー入った!まっすぐ入んなかったからちょっとひやっとしたわ。これで入んなかったらかなりかっこ悪いからなぁ。よかったー」

ケラケラ笑いながら小走りでボールを取りに行った森崎君は、私に向かって下から軽く投げてパスしてきた。

慌てながらなんとかキャッチする。


「じゃあ次有馬やってみようぜ!試しに何も考えず投げてみて?」

「わ、わかった」


勢いよく投げたボールは、板に強くあたるとそのまま跳ね返って地面に落ちた。


「おぉ、思ったより豪快だな」

「ごめんなさい!なんか緊張しちゃって…」

「大丈夫大丈夫!何回も投げたら慣れてくるって!なんなら俺放課後暇だし、明日以降も自主練付き合うからさ。頑張ろうぜ!」

「ありがとう…!」


ただの一クラスメイトの為に放課後練習に付き合ってくれる森崎君は、間違いなく優しい人だ。

私だったらそんな面倒なことなんてせずに、きっと見て見ぬふりをしてしまう。

森崎君が声をかけてくれなかったら気づかなかったんだから、無視だってできたはずなのに。



今ここにいるのが私じゃなくたって森崎君は声をかけていただろうとわかってはいても、どうしても喜んでしまう心は止められなかった。