「ごめんなさい!気持ちは嬉しいけどどうしても私、森崎君が好きなの」

とっさに口に出すと、自分の中のふわふわした気持ちが固まっていくのを感じた。

フラれてしまっても、私がこの一年育ててきた気持ちは簡単には無くなってくれない。

迷惑にはなりたくないけど、想うだけなら自由だよね?

森崎君、やっぱり私、あなたのことが好きなんだ。


「そう、か……」


緒方君が私の手を握ったままうつむく。

一年生最後のあの日に味わった辛い思いを、今緒方君も味わっているんだと思うと声をかけたくなるけど……フラれた相手に声かけられるのも辛いよね。

一人にしたほうがいいかとも思うけど手を握られてるから帰れないし……。


私どうしたらーー。

「……っ………っぁ…っく」

もしかして、緒方君泣いてる?

よく見ると肩が小刻みに揺れているし、耳をすませば空気の漏れる音が聞こえる。

え、どうしよう。


「緒方君、大丈ーー」

「あっははははは!!」

え?

「あんたマジで森崎に惚れてるんだな!
 あいつに告白した奴は何度も見たけど、フラれた後も好きなやつは初めて見た!!」

「え、緒方君…?」

予想外の反応に思考が停止する。

笑いすぎたせいなのか出ている涙をぬぐいながら、緒方君は私と距離をとった。

「悪いな!騙しちまって。あーあ、今回は当てが外れたなー」

「だました?当て??」

「そうそう。森崎にフラれた女が、弱った所に告白されたらどうするのかってゲームだよ」