「理由はわかっただろ?俺と付き合ってほしい」

「待って、私はあなたのこと全然知らないし、それにーー」


それに、やっぱり私は、森崎君が好き。

こんな状態で付き合うなんて、それこそ緒方君を傷つけることになる。

断らなきゃ……。


「それに、何?」

「それは言えない。……ごめんなさい」

「理由聞かないと納得できない」


理由…。

人に話すのは恥ずかしいし、緒方君と森崎君が友達だと思うと言いにくいものがある。

でも、私も緒方君の立場だったら理由が知りたいもの。

答えなきゃ。


「……好きな人がいるから」

「まだ森崎のこと好きなの?」

「なんで私が森崎君を好きな事ーー!」

「知ってるよ。いつもお前の事見てたから。
 森崎はいいやつだけど、恋人には向かない男だ。友達だからよくわかるんだよ。俺なら君を森崎よりは幸せにできる」


「だから、俺を選んで?」


自分の気持ちを見透かされていた事に、恥ずかしさが募る。

戸惑う私に緒方君は一歩近づくと、私の手を握った。

自分より一回り大きい手に、急激に体温が上がっていくのを感じる。