また、金曜日がやってきた。
いつもと違って重い足取りで倉庫に向かう。

倉庫に着くといつもとは違い
奥の部屋から声が聞こえていた。
見てはいけない声だと分かっていたが
ドアを開けて見ずにはいられなかった。

ゆっくり開けるとそこには爽と
知らない女の人が裸で抱き合っていた。

一瞬、爽と目が合った。
これ以上は見たくないと思い倉庫から
出て行こうとした時、倉庫に入ってきた
優とぶつかってしまった。

優は奥から聞こえる声で状況を察して
「行こう」と私の手を引き倉庫から出た。

優と2人無言で歩き続け、たどり着いた
公園のベンチに腰を降ろした。

「お前と初めて話したのは
丁度一年前くらいだったなぁ」
優がポツリとつぶやいた。
「俺さ、正直お前を初めて見た瞬間、
俺のものにしたいって思ったんだよ。
今思えば一目惚れ?ってやつだったんだろうな。」
私は目を丸くして優の顔を見た。
「やっぱ気付いてなかったか、そりゃそうだよな。
お前は最初っから爽の事しか見て無かったしな。」
「なんか、ごめん...」
「いや、謝らなくていいし。
俺も分かってたからバレないようにしてたから。」

「お前と出会う前の爽は取っ替え引っ替え
あの倉庫に女連れ込んでたんだ。
それが無くなってたから、
お前と付き合ったと思ってたけど、
お前の話だと付き合ってねえって言うし。
先週もお前を送った後どうせクラブに
顔出してるんだろうと思って行ったら居なくて
倉庫に戻ったら女連れ込んでるし。」

「今まではお前がいいって言うから黙ってたけど
流石に腹が立ってあいつに言ってやったんだ。
お前のことどう思ってるんだって
そんなんだと俺がもらっちまうからなって。」

「えっ、」

「いや、驚きすぎだし。
俺はお前の気持ちも分かってるから
すぐどうこうしようって訳じゃなくて
爽にちゃんと話をしろよって意味で言ったんだ。」

「けど今日の様子じゃ何も話せて
無さそうだし、お前が来るって分かってて
あんな事してた訳だし、
お前は今爽のことどう思ってるんだ?
やっぱまだ好きなのか?」

「...うん、そうだね。
まだ好きって気持ちはある。
けど今までの関係はただのセフレって
言われちゃったらそこまでだし。
爽は元々私に興味が無かったのかもしれない。
毎回優に送るのも頼んでたぐらいだし。」
そう自分で言っていて泣きそうになった。

「なあ、さっきはあぁ言ったけど、
やっぱ爽なんかやめて俺にしとけよ。
...ってそんな困った顔するなよ。」

「ごめん。どうしたらいいか分からなくて。」

「...まあ、何かあったら俺に頼れよ。」

「ありがとう。」

「帰るか、送ってく」

私の家までの帰り道、お互い何も話さなかった。

「じゃーな、おやすみ」
「ありがとう。おやすみ」