学校一の王子様に捕まってしまいました。



「俺の、「高級なお菓子は勘弁してください!」


月原君の言葉に被せて言った。

先手必勝だ!


「は?」


なにいってんの、というような怖い顔で見てくる。


もう嫌だーー

帰りたい。


そして、次の月原君の言葉で逃げ出したくなった。


はぁ、とため息を吐いた月原君は仕切りなしというように顔を上げ私を正面から捉えた。







「俺の彼女になって」






「ご、ごめんなさい」


え、なんでそうなった……?


ん?


完全に思考停止している脳を回転させる。

咄嗟に断ってしまった。


でも、付き合う気はないからいいか、

そんなことより、ずっと無言の月原君が気になる。





「えーっと、月原君?」


しばらく、ぼーーとしてたけど、はっと我に返ったようになり喋りだした。


「君に拒否権なんてないよね?」


嫌だなー、私にも人権はあるんだよー

なんて言えるわけもなく

「は、ははは」


乾いた笑みがこぼれた。


「じゃあ、これからよろしくね」


私、月原君の彼女になってしまったみたいです。


満足気に差し出してくる手を弱々しく握り返した。


「よ、よろしくー」


これから一体どんな仕打ちを受けるのか、


!っていうか、月原君のファンの子たちに殺されるんじゃ


あ、終わりました。




「月原君、一つお願いがこの事は二人だけの秘密にしよう!」


一瞬きょとんとして、それから考える素振りを見せると

「二人だけの秘密か、うん。いいよ。」


納得してくれたみたい。よかった。

誰かにバレることだけは避けなければ


なんで月原君は私を彼女にしたいのかは謎だけど、

こうなった以上この危機を乗り越えなければ!








というわけでこの状況。


「もーー、いつまで続くんだろう?」


「んー、百合は好きじゃないの?王子のこと」


「好きじゃないよー、向こうだって私のこと好きな訳じゃないだろうし

ただ、私が月原君の秘密をばらさないように見張ってるんじゃない?」


「ふーん、そうかなー」



あの日から早1ヶ月がたった。


その間特になにもなく、恋人らしいことをした訳でもない。


付き合ってる意味ってあるのかな?


ん?それともどうでもよすぎて忘れられてる?


「じゃあそろっと別れてって言えば別れてくれるんじゃない?」


なぜか楽しそうな彩月。


「今日の放課後にでも話してみたら?」


まぁ、このままズルズルいくのもよくないし、


「そうしてみるね」

この前、交換した連絡先を探しメールをいれる。

『話があります。放課後、図書室に行きます。』






きた、放課後が


「ふぅ、」


深呼吸をして図書室に入る。


あの日以来初めて話すから妙に緊張する。


「久しぶり、月原君」


「久しぶり、小坂さん」


彼は私の前だと心の底から笑っているような気がする。

自意識過剰なのかもしれないが、いつもの作った笑みでないことは確かだ。

単刀直入だが、


「あのね、話ってのは」

「うん」



「私たち別れよう。」


「うん、え、は!?」


納得してくれたと思ったら大声を上げるものだからビックリした。



「え、なにいってんの?」


そんなに驚くことかな?


「だって、お互い別に好きな訳じゃないし、何かをするわけでもないし」







「付き合ってる意味ってあるのかな?」


え、だって、この一ヶ月間私たち全く会話してないよね?


私たちが付き合ってる需要ってあるのかな?


なかなか口を開こうとしない月原君。


「それに、もし月原君が好きな子とかいるんなら別れた方がお互いのためだと思うし」


そろっと、何か言ってくれてもいいんじゃ、


「なんで」

「え?」


「なんでっ、」


少し、苦しそうな悲しそうな声。


「お互い好きな訳じゃないとか勝手に決めんな」


え?


そんな苦しそうな人間味のある顔初めて見た。


「最悪、こんなつもりじゃなかったのに」


「どういう……」






「好きだ」







まって、どういうこと?


へ?


好き?

なにがっ!


まって、むり頭が追い付かない。


「ほんとは、こんなつもりじゃなかった。

もっと時間掛けて百合が俺のこと好きになってくれたら言うつもりだった。」

な、名前!?



ぎゅっ、

抱き締められ、香る柔軟剤のいい匂い。

てっ、変態みたい、それどころじゃない!



「ちょっ、離して」


「やだ」


なんか、甘い。


あれ?こんなキャラだっけ?


「はーー、むり抑え効かない」


「へ?」


「俺、好きな子はめちゃくちゃ甘やかしたいから

近くにいたら離れられなくなるのわかってたから」


それじゃこの一ヶ月間





「付き合ってるってだけでも舞い上がってるのに、

こんな二人だけの空間とか何しちゃうかわかんないし、」


え?

二人だけ。これって、まずいんじゃない?


「これから、覚悟してね」


血の気が引いて真っ青になったのは言うまでもない。




別れ話をしに来たのに。


まさか、月原君が三重人格とか聞いてないんですけどーーーー!!!








ピピピッピピッ

カチッ


ね、寝不足だ


なんか月原君の新しい人格を見てしまって心が休まらなかった。


うっ、

頭痛い。学校休みたい。


今は7時、この時間じゃお父さんもお母さんも、もう仕事行ったよね。


ブルッ、

寒気がする。風邪だ。

昔から体が弱くすぐに風邪をひいてた。


まさか、高2になってまでこんなに体が弱いとは思わなかった。


とりあえず、

『体調悪いから学校休むね』

お母さんと彩月に連絡をいれた。


昨日は二駅も違うのに送るって聞かない月原君に送って貰い帰ってきた。


突然のこと過ぎていろいろ追い付かない。


ピロン

『学校には連絡いれておくね。
お母さんとお父さん、今日帰れそうになくてごめんね

安静にね』


お母さんからの返信を見てため息を一つ。

今日は、家にひとり。


ふぅーー、


とりま寝よっと